カヴァラドッシが明け方の空にみた星

9月、
春からずっと心待ちにしていた、ローマ歌劇場の引越公演 「トスカ」を観ました。

トスカは、パパとママが新婚旅行で行ったローマで観たオペラ、パパが最も愛したオペラでした。

パパが(たぶん音に包み込まれる感覚になるからか)車のなかでCDを聴いたり、映像を観たりしながら、幸せそうに、すこし苦しそうに、ほんとうに大好きで美しいと思うものに酔いしれている、そういう姿を思い出しました。

わたしは、この公演に絶対に行かなきゃいけないと、なぜかそんな風に、強い衝動と共に思いました。

東京へ向かう新幹線に乗るため、この日はうんと早起きをしました。

まだあたりは真っ暗で、よほど空気が澄んでいたのか、 住宅街から見上げると満天の星が散りばめられていました。オリオン座もこちらに迫ってきそうにみえました。
肌寒さに耐えながらひとつひとつの星に目を凝らし、その静かな瞬きに少しのあいだ見惚れていました。

同じ日の夜、死を目前に控えた主人公カヴァラドッシ が歌う「星は光りぬ」ー 愛する人を想い、生きたいと星に願い歌いあげるアリアーを、 からだに沁みこませるように聴いていました。

わたしが冷たい空気のなかで見た星は、彼が明け方の空に見た星と同じだったのだと、そう思いたい。



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